理事長・所信
理事長
上野 充司
一灯なり地域を照らす ~日本の自立は地域から~
時代の変革期を迎えて
未だ続く景気の低迷は、バブル経済崩壊後20年以上が過ぎ、“失われた30年”になる可能性すら感じられています。とはいえ、この状況下においてさえ世界から見れば、まだ日本は平和で豊かな国であるといえるでしょう。これはひとえに偉大なる先人達の血のにじむ努力によって築き上げられてきたものであります。
2009年の政権交代以後、この僅かな期間に現与党で3人目の首相を数えることとなりました。国内の状況は、震災からの復興が遅々として進まず、原発事故に端を発したエネルギー問題は将来の方向性が見出せずにいます。そして、景気低迷の中での消費税増税の議論は、本質を外れ国民不在のまま政争の具として扱われました。一方、国内のことに目を奪われている間にもわが国を取り巻く国際環境は、近隣諸国と領土領海問題を抱え、米国との関係においては米軍基地移転問題を端緒に従来の関係から変容する可能性もあります。また、景気低迷や財政不安はわが国だけでなく欧米先進国の多くが抱えている状況でもあります。経済活動においても国家間の安全保障においても不安定な要素が多く、多様化した課題が山積している中、世界各国でリーダーが交代し、政治的転機を迎えています。いずれにしましてもどこの国もそれぞれの主張、行動は国益を守ることが大前提であるのに対し、わが国の場合、それを明確に提示しているように思われない場面が多々あると感じずにはおれません。
これはやはり戦後体制を引きずり続けたことに起因すると考えます。戦後復興に精力を注ぎ、その後にむかえた高度経済成長が続いている間には問題は潜在化していました。しかしながら、経済的に成熟し低成長の時代となった今、金銭的、物質的豊かさを求め続けてきた間に、わが国が元来大切にしていたもの、脈々と受け継いできた伝統、文化、歴史、世界に類を見ない精神性といったものがどこかに置き去りにされ、埋没してきました。そして、国民に目を向けると、その多くは自由・平等・権利を主張し、リーダーや政治への批判には長けているものの、当事者意識を持って自分たちの進むべき道を決めることに対しては無関心であると感じずにはおれません。そこに追い打ちをかける様に、2011年3月に東日本大震災が発生したのです。このように迷走し、閉塞感が覆う中にありながら、一方では新しい時代を創り、前進しようとする胎動は一般市民や地方から感じられます。震災後のボランティア活動、自国の国土を守ろうとする意識、地方政治における旧態を打破しようとする盛り上がり、等々 市民や地方の草の根的な活動・運動が高まっていると感じます。ここにおいて青年会議所は、本来の役割として時代を切り拓く先頭に立っていかなければなりません。世の中が抱える問題を自分自身の問題と捉え、解決方法を導き出し、それが自立した地域、自立した国家へとつながるような運動に取り組んでいきます。そして、次代を担う子どもたちが自立した人へと成長できる事業を展開していきます。こうした運動に取り組み、近く60周年を迎える当LOMにおいて、先輩方が築いてきた信頼、実績、歴史を汚さず、その志を全うし、そしてそれを後進にも受け継ぐよう全力を尽します。
地域の輝きが牽引力となる
JC運動の大きな柱の一つにまちづくりがあります。地域が持つ問題や課題を見出し、それと真摯に向き合い、そして地域が持っている可能性を引出し、将来のまちの在り方を創造する一助となる。私たち堺高石JCは近い将来、広域行政が必要とされていくと考え、9年前に自らが行政に先駆けて合併しました。同時に広域行政の必要性を広く市民に訴えて参りました。そして現状では、私たちが住む堺・高石市は大都市制度改革の先鞭として、全国的に衆目を集め、その議論が地方行政から国政へも持込まれている状況となっています。この大都市制度改革が本格化する状況におきまして、本年の青年会議所としましては国政選挙や首長選挙における情報提供の場を設けて参ります。それぞれの地域で議員、首長を選出するのは私たち有権者であり、決して人任せにできるものではないのです。そして、政治の責任は、私たち有権者に責任があるという認識を訴えていきます。
一方で堺市が政令指定都市となり、8年目に入ろうとしております。行政サービスは区割の色を濃くし、きめ細かく地域の特性を活かそうとする動きが感じられます。私たちは民間団体として、地域にある独自の歴史、文化を掘り起し、地域資源を活用し、輝ける地域を創造する事業を手掛けていきます。その事業が、高齢者から子どもたちまで笑顔溢れるまちづくりへとつながるよう尽力致します。
これからの我国は、地域の輝きが日本の牽引力になっていくのです。政治や行政と民間の両輪が噛み合って輝けるのです。そして、輝ける地域を創造することにおいて、私たちJCが先頭に立つ最も有力な団体との自負を持ち、その役割を全うしていきます。
戦後教育の再生
私たちJCは、日本人の気高き精神性を取り戻し、正しい歴史認識を浸透させ、古来大切にしてきた伝統と文化を重んじる運動を継続してまいりました。しかし、その運動とは裏腹に、各種メディアに目を向けると親による子どもへの虐待、果ては子殺し、親殺し、いじめによる自殺、といった目を覆いたくなるようなニュースが後を絶ちません。働かない若者の増加や生活保護の不正受給といった問題もあります。これらは戦後教育に誤りがあったと考えます。和を重んじ相手を慮る心よりも、個を重んじる思想が植え付けられてきました。それにより、自己の利益にのみ関心が向き、物質的・経済的な価値が過大となり、利己的な風潮が蔓延するようになりました。東日本大震災が発生したのは、このままではわが国の将来が危ないと多くの国民が気づきつつあるときであったように思われます。被災地での秩序正しい行動、全国での被災地支援の活動からは、日本人の根底に根づく精神性が掘り起こされているように感じました。本年度のJCの事業におきましても、“個”は“公”の中で生かされていることを感じ、日本人としての思いやりを忘れず、生かされていることに感謝し、日本人としての道徳心を子どもたちに伝える運動に取り組んでいきます。
また、国内の問題に耳目が奪われている間にも、国家の存在そのものを脅かされる事態が発生しています。近隣諸外国により不法な実効支配に甘んじている領土、隙あらば奪われかねないと想定される領土がわが国にもあるのです。この領土領海問題は、ひとたび何らかのアクションが起これば各種メディアで取り上げられますが、ほとぼりが冷めれば国民の意識からは忘れられたかのようになってしまいます。これもまた、戦後教育、特に、教えられなかったり歪められたりされている歴史教育に問題があります。さらには戦後体制において、経済発展が継続する間に、国民への情報提供が乏しく、国民意識から置き去りにされ、あるいは意図的に目を背けてきものでもあるでしょう。日本人として全国民が国家の主権者であるとの意識を持ち、わが国の歴史を学び今私たちが歴史上のどの地点にいて、今後、諸外国とどのように付き合うべきかという意識を持つ必要があります。さらには、単に歴史的経緯や国際法上の正しい知識を学ぶに留まらず、いかに国益を主張し守るかという意識を醸成しなければなりません。国際社会において、日本がどうあるべきかを考えるのは、私たち国民自身の問題であるという自覚と気概をもつことを訴えていく事業を展開していきます。
世界の中の堺市、高石市
グローバル化ということが叫ばれてからどれほどが経過しているでしょうか。直接的な体験は無くとも、現実にはこの堺・高石市でも多くの外国人を見かけます。また、メディアへの露出の多いスポーツ選手をはじめ、海外で活躍する若者も増えております。そして、東日本大震災における日本人の秩序正しい行動は、世界中で賞賛を受けました。これはごく一例なのですが、日本人は世界から自分たち自身がどのように見られ、受け入れられているのか、認識不足であるとよく言われます。現実としてグローバル化が進む中で、世界から見た私たち堺・高石市がどのような位置づけにあるのか知る必要があると考えます。そして、国境を越えて、歴史、文化、価値観の違いを理解し、お互いを尊重し合う関係を深める民間外交が、未来を見据えた相互発展を目指す一助になるような事業を手掛けます。
会員拡大、研修、交流が基盤となる
私たち堺高石JCは、この4年間、毎年約50名の新しいメンバーを迎えてきました。出生人数が減少しはじめる年代が入会対象者になり、また会員の減少が全国的な課題となっている中で、メンバーのみならずシニアクラブの先輩方、地域の皆様にご協力頂いての賜物であります。私たちの志や運動の本質を市民の皆様に伝播していくために、スケールメリットは大きなアドバンテージであります。本年もメンバー全員が拡大担当として、LOM全体で取組む事業として拡大を行って参ります。全メンバーが青年会議所の存在意義を理解し、入会することによって得られる貴重な機会、また青年会議所でなければ得られない友情を熱い想いをもって伝え、新たに運動を共有出来る同志を迎え入れます。それがLOMの基盤を強化し、地域にとって必要な団体であり続けるように、組織構築して参ります。
また、青年会議所には長い歴史の中で培ってきた人材育成のツール、プログラムがあります。それらは青年会議所内のみではなく、企業や地域での集会の場でも有効に活用できるものであります。この青年会議所が培ってきたものを積極的に活用し、地域のリーダーへと育ててまいります。
そして、青年会議所の組織内での交流も重視していきます。運動を通じて、志を同じくする者が力を合わせて事業に取り組み、そこで育まれる人間性、友情はかけがえのないものであり、他団体と比して、より貴重な存在の組織体であると確信しています。現に各地域や業界団体でも要職を担うメンバーもいれば、いずれそうなるであろうメンバーが多く在籍しています。そのようなメンバーと交流を図りながら、一つの目標に向かいもてる力を結集する。ここ一番で結集するためにも、メンバー間の交流がより一層深められるように努めていきます。
情報発信力の向上
私たち堺高石JCは、市民の皆様に私たちの思いや考えを伝播し、明るい豊かなまちづくりを目指して運動を展開しています。どれほど有益な運動をしていても、市民の皆様に発信できていなければ、何の意味も持たないのです。そして、新たなメンバーを迎えたくとも私たちJCの存在が認知されていなければ、そこに多大なる労力を要することになります。現在は通信技術の発達により多くの市民の方に多くの情報を提供することが可能です。そして、情報発信ツールに長けたメンバーも在籍しています。本年度もホームページやSNSを活用し、日頃からの情報発信に力を注ぎ、私たちの運動をより多くの市民の皆様にご覧頂ける手法も合わせて模索して参ります。そして、運動の発信と同時に入会希望者への説明ツールとしても活用していきます。
最後に~地域から日本を再生~
今、日本を取り巻く一種の閉塞感は、これから新しい時代を迎えるための準備にあると信じています。中央集権体制を是とする価値観は崩れ、それぞれの地域がそれぞれの地域にある文化や伝統、習俗、景観を活用して、その地域を輝かせる。その輝きが日本を再生する牽引力となる。そして、経済的、物質的な豊かさよりも精神的な幸福に重きを置くよう価値観が変容していくと思います。そのときに構築される価値観は、何も新しいものではなく、わが国の悠久の歴史で育まれ、我々国民の心に根づいているものであります。そのような大きな時代の変化を迎える中で、JCは地域の先頭に立ち、強い影響力を持つ団体で有り続けなければならないと考えております。青年ならではの行動力を発揮し、地域のリーダーたらんとして、地域ため、日本の未来のために全力で取り組んで参ります。