2018年度 理事長所信【北口 崇】

はじめに

Compassion〜共感〜
私たち青年会議所の運動は自己完結するものではありません。社会に散在する諸問題を解決するため市民の人々に共感してもらい、共に活動することで市民の意識を変革させていくものです。堺高石青年会議所(堺高石JC)においても、60年以上の歴史のなかで堺シティマラソン、堺大魚夜市、住吉大社神輿渡御の復活など市民の人々と一緒になって地域社会にインパクトを与えた運動をおこなってきました。現状に満足することなく今後もこの堺市・高石市における様々な問題を直視し、市民の人々にも共感を得る運動をつうじて市民の意識変革をおこない、魅力溢れるまち「堺高石」を実現します。

誇れるまちをみんなで作ろう

私たちの活動拠点である堺市・高石市には昨年国内推薦を獲得し、世界文化遺産登録を控えている百舌鳥古市古墳群を始め、世界に誇れる歴史、文化、伝統に満ち溢れています。しかし、市民一人ひとりが地域の魅力に誇りをもち、共に発展させていかなければ衰退の一途をたどることでしょう。だからこそ、市民一人ひとりがこの地域のことをよく知り、堺市民・高石市民であることに誇りをもつ環境をつくる必要があります。そのためには、まずは私たちJCが地域における先導的役割としてこの地域の魅力を調査・研究し、それらを発信することで、多くの市民に地域を再認識していただき、堺市民・高石市民としてのアイデンティティを醸成していきます。
また、わが国においては2020年までの訪日外国人の目標人数を年間4000万人とし、年々実数は拡大の一途をたどっていますが、関西においてはその多くが大阪市内、京都へ流れる傾向にあり、堺市・高石市のインバウンド集客は遅れをとっているといえます。今後インバウンドを推進していくためには多くの市民や行政や各種団体が立場の違いを超えて協力し、堺市・高石市の強みを活かしたまちづくり、地域発信をしていく必要があり、私たちは様々な事業・運動をつうじてその連携を強めていきます。
私たちがそれらの運動を力強く展開していくことで、古くはわが国の海外との交流の場として発展し、「ものの始まり何でも堺」と言われ数多くの伝統、文化、産業を発信していた魅力溢れる堺市・高石市の再興につながっていくのです。

将来の自然災害に備えよう

2011年3月11日、東日本大震災が発生し、東北から北関東にかけて未曾有の被害を及ぼしました。各地会員会議所が協力し合って被災地支援にあたり、堺高石JCにおいても義援金募金活動など様々な支援活動をおこないました。それから7年。その間も熊本地震や各地の豪雨災害など、この国には様々な災害が降りかかっています。私たちが住み暮らす地域においても、今後40年以内に90%程度の確率で南海トラフを起因とする東南海地震が起きるといわれています。そして、近年はゲリラ豪雨を始めとする豪雨災害もいつどこで発生するかわからない状況です。
まずは、被害を最小限に抑えるためには災害が起きる前の平常時にこそ防災・減災に対する市民の意識醸成と諸団体が協力する組織づくりが不可欠です。そして、被災時において市民が自助・共助の精神をもってお互いに支え合う社会を作っていきます。さらに、このまちの防災・減災対策や被災時対策の現状を把握し、問題点の改善を図り、行政・諸団体との人的ネットワークの構築をより強固なものとし、市民の方々の防災・減災意識を高める機会をつくっていきます。また、私たちJC自身も災害時に被災者でありながらも日本JC・各地会員会議所や諸団体と連携を取りながら復興にあたることができる仕組みづくりを模索していきます。その結果、このまちが災害に強い地域社会となり、安心安全のまちが実現していくのです。

次世代を担う若者を育てよう

わが国は、世界が未だ経験したことがない超高齢化社会に突入しつつあります。既に4人に1人が高齢者であり、生産年齢人口は減少の一途をたどっています。この様な状況では、将来を担う青少年が先行きに不安を感じてしまいます。しかし、私たちがこの社会で住み暮らす限り、限られた資源のなかで新たな可能性を模索し、社会・経済を成長させていかなければなりません。
折しも、ここ数年シンギュラリティという言葉が注目され始め、人工知能(AI)やIoT、ビックデータなど様々な新技術が目覚ましい進歩を遂げ、新たな事業モデルが立ち上がりつつあります。また、堺市・高石市においても活用されていない物的資源・人的資源がたくさんあります。新たなチャンスや可能性は地域に点在しています。将来への不安要素ばかりに目が行きやすいですが、視点を変えてみれば明るい要素は十分にあります。
だからこそ、次世代を担う青少年には広い目線で社会を見て積極的に新たなことへ挑戦し、社会を切り開き牽引する人材に育ってもらわなければなりません。そのためには、青少年が仲間同士で手を携えて新たな技術・地域の可能性を学び、柔軟な発想で夢を描き社会に挑戦していく人材となる成長の機会を創出してまいります。活力ある青少年がチャレンジ精神を持って社会を牽引する社会人へと成長することで、堺市・高石市にとどまらず社会全体がもっと活気に満ち溢れた社会へと成長していくのです。

社会にインパクトを与えられる人材になろう

私たちの運動とは、市民の人々に共感してもらい共に活動することで市民の意識を変革させていくものです。だからこそ、運動を推進させていく私たちJCメンバーは市民のオピニオンリーダーとして、自らが社会を牽引し社会を変革していく気概を持たなければなりません。そのためには、メンバーが自己成長する場が欠かせません。その点、JCは社会を変革していく団体というだけでなく、メンバー一人ひとりにとっての学び舎でもあります。そして、その学び舎で様々な経験を積むことが、JC運動に限らず個々の会社、地域社会などあらゆる場面において活躍する人材となります。自己成長の場は人によって様々であるため、JCにおける様々なセミナーやフォーラムに限らず多くの経験を積む場、多種多様な人材との出会いをとおして自分を磨き続ける環境をつくっていきます。それがLOMの組織力を向上させるだけでなく、個々の会社や地域社会の発展にも大いに寄与することとなります。
また、JCは年間を通じて様々な事業をおこなうことで、市民意識の変革運動を展開していますが、ただ事業をおこなうだけではなく、その運動が地域社会・市民にどのような影響を与えたのか、今後どのようにその運動をつなげていくのかを全メンバーで共有することが必要です。多くのメンバーがLOM全体の運動方針、内容を理解することで、より力強く私たちの運動が社会に発信され、市民の方々からも共感してもらえる運動が展開でき、社会の変革を促していくことができるのです。

堺高石JCブランドを確立し、積極的に情報を発信しよう

今や「JCしかない」時代ではなく「JCもある時代」とも言われるなかで堺高石JCが今後も市民の人々の共感を得た運動を展開していくためには、多くの市民と目的意識を共有し、私たちのことを知ってもらうことが必要になってきます。
そのためには、まずは私たち自身が社会に運動を発信していく前に組織のビジョン、方向性を共有する場が重要になります。JCでは様々な諸会議によって意思決定をおこないます。円滑な運営を行なうことでメンバーが自分たちの方向性を理解でき、活性化された組織につながっていきます。
また、堺高石JCでは長きに渡ってウェブサイトやSNSを活用した様々な情報発信をおこなってきましたが、情報ツールは常に進化し、新たなものが生み出されています。いつまでも決まったツールに捉われ続けるのではなく、その時代、ターゲットに最も適したものを柔軟に活用し、私たちからの一方的な情報発信ではなく、情報を受け取る側からも想いや意見を幅広く受け取って相互理解を深めていきます。
その結果、堺高石JCブランドが確立し、堺高石JCそのものや運動への社会認識を高め、人々の共感を得ることができます。

仲間を増やそう

私たちの運動とは、自分たちの組織内で完結するものではなく、多くの人々から共感を得て、共に社会をよりよくしていくものです。だからこそ、私たちと志を同じくする仲間を1人でも増やすことが大切です。また、ただ単に数を求める拡大では、志を同じくする仲間を増やすことには繋がりません。私たちのビジョン・運動に共感したうえで入会してもらうように努めていきます。幸いなことに全国においても会員数が減少傾向にあるなか堺高石JCでは近年多くの新入会員を迎え入れることができ、会員数は増加傾向にあります。今後も継続的な拡大運動を進めていくためには、まずはメンバーが堺高石JCの魅力・ビジョン・運動を個々に理解し、自ら積極的に運動へ参加する土壌づくりが必要です。達成感、面白さを感じ、能動的に活動するメンバーが多くなれば、メンバー全員による継続的な拡大運動が可能となります。
また、拡大運動は、当該年度の短期的な目標達成を目指すだけではなく、長期的な戦略をもって会員数が年々拡大していくよう人材発掘を続けていきます。そして、退会率にも着目し、その原因を調査研究し、改善を図っていきます。
拡大運動はメンバーを入会に導くことがゴールではありません。メンバーの定着率を向上させ、この地域を自分たちが輝かせようという人材を増やす拡大運動を展開することで、堺高石JCはより強固な組織となり、これからも社会にインパクトを与える運動を続けていくことができます。

友情を深めよう

堺高石JCでは、会員数が増加する一方で、出席率、退会者数の改善が進まない現状にあります。それは、入会するメンバーに対してJCの魅力や活動意義を伝えられず、コミュニケーションが図れていないからです。私たち一人ひとりの力は小さいかもしれませんが、その力が結束した時、私たちの力は何倍にも力強いものとなります。だからこそ、JCの事業に限らずメンバーが互いに交流を深める様々な機会をつくり、メンバー間の信頼関係をより深めていきます。
また、私たちメンバーは時には家族の協力、理解のもと日々活動をしています。JC運動に送り出す家族にこそ、我々の日々の活動を理解いただき、支えていただかなければなりません。そのためには、私たちは家族への感謝を忘れないのは当たり前ですが、その他にもメンバーと家族の交流や共に活動に参加する機会をつくる必要があります。

出向で自分を磨こう

先述のとおり、青年会議所とは学びの舎です。日本JCに出向をすることで、メンバーはLOMの活動だけでは経験できない多くの学びや気づきを得ることができます。また、出向先では全国津々浦々から様々なJAYCEEと出会いますが、この出会いが必ずや出向者にとって大きな財産となります。多くの出会いと経験を重ね自分を磨いた人材が増えることで、また一段と強固なLOMを築くことができ、より社会にインパクトを与える運動を展開していくことが可能となります。だからこそ、出向という仕組みを活用し、多くのメンバーがその貴重な体験ができる機会を作り出します。そして、出向してきたメンバーが、出向で得た経験をLOMに地域に活かせる場を創造していきます。

長期運動指針に沿った運動の推進

我々は創立60周年で定めた長期運動指針に沿って、1995年の全国会員大会堺大会以来の大規模大会招致に向け、昨年度は臨時総会にてアジア各国からJCメンバーが集うJCIの国際会議であるASPACの招致に関する決議を採択しました。しかし、「ASPACを招致すること」が目的ではありません。ASPACを開催することで堺市、高石市にどのような持続可能性のある影響を与えられるのか、それが大切です。そのためには、ASPACを堺市・高石市の地で開催することの意義・ビジョンをより明確にするために様々な調査研究を行い、日本JC国際グループの各委員会とも連携を図りながら、具体的な開催計画を策定していきます。
また、先述のとおり、訪日外国人は増加傾向にあり、経済においても世界との交流は益々盛んになっています。世界との交流を促進することが堺市・高石市においても地域活性のためには必定となってきています。だからこそ、市民の国際意識醸成を進めていきますが、そのためには市民のオピニオンリーダーであるべき私たち自身がまずは国際意識の高い人材へと成長しなければなりません。JCは世界会議など世界と交流する様々な機会を多分に有している組織であり、堺高石JCにおいても昨年度にはかつて高石JCの姉妹LOMであった台湾・潭子國際青年商會(潭子JC)と改めて交流をもつ機会を得ました。今年度も各種国際大会へのメンバー参加を促進すると共に、姉妹LOM締結の選定・推進と交流の促進をはかることで、世界のJAYCEEとの交流を深め、メンバーの国際意識の醸成をはかっていきます。

終わりに

「Stay hungry.Stay foolish.」
これは2005年、Apple創業者、故スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学卒業式のスピーチを締めくくった言葉です。彼はスピーチで自分に人生における3つの話を伝えています。

• 現在の決断は必ず将来何らかの結果に結びつく
• たとえ敗北や失敗があっても、そのことが人生を豊かにする
• 人生において時間は限られている。他人の雑音に捕らわれていられる余裕はない。

自分の決断を信じ、失敗を恐れず、信念を貫き通すことで、道を切り開くことの大切さを説いたわけです。
JCの活動においては様々な迷い、苦しみもありますし、時には厳しい決断を迫られることもあるでしょう。しかし、私たちには明るい豊かな社会を実現するというビジョンがあります。ビジョンに向かって行動するのみです。私たちは批評家ではありません。能動的に行動する青年経済人です。地域社会を変革し続けてきた諸先輩方の想いを引き継ぎ、失敗を恐れず、信じた道を突き進み、共感を得る運動を展開し、魅力溢れるまち「堺高石」を実現します。